アメリカでは復調確実?最新データから見えた日本の住宅市場の”半年後”|TERASS CEO江口亮介

8月17日に、日本政府が発表して2020年4~6月期のGDP(季節調整値)速報値は、実質で前期比7.8%減となり、このペースが1年間続くと仮定した年率換算は27.8%減と戦後最大の落ち込みであることが発表されました。

いわずもがな、新型コロナウィルスによる経済活動抑制と、輸出の抑制による影響が出ている形です。そして戦後最大とはすなわち、リーマンショック以上の経済影響が発生しているとになります。

一方で、同日17日には、8月度の首都圏の不動産流通の統計データが発表されました。
首都圏の中古マンションは成約件数で昨年同月比-2.4%(4月は-52.6%)、中古戸建ては+2.4%(4月は-41.5%)と、復調の傾向を示しています。

そして㎡あたり成約価格においては中古マンション+4.7%、中古戸建て-2.1%と、こちらも復調、中古マンションにおいては顕著な価格上昇も起こっている状況です。

社会的に類を見ない形の経済動向のため、なかなか今後の見通しをつけるのは難しい状況ですが、動向を逐次見守ることは重要かつ、他国の状況をから自国の行く末を見立てるのも同様に重要です。

今回は、日本以上に住宅売買が盛んなアメリカ合衆国におけるコロナ禍の住宅市況を確認しながら、日本の住宅市場について考察をしていきます。

コロナ前後のアメリカの市場

本気記事では、整理されており見やすいため、アメリカの不動産仲介事業者で上場企業であるRedfinが発表しているマーケットデータを参考にします。Redfinはアメリカ全国の不動産業者間データベースにアクセスできることから、極めて網羅的な市場データであるといえるでしょう。

成約数は回復基調

まずは成約数を見てみましょう。4週間の平均値のためグラフの動きには遅効性がありますが、日本でも緊急事態宣言が発令された4-6月は昨年同月比-30%程度まで落ち込んでいます。

しかしながら6月以降急激に回復しており、直近の4週間においては昨年比の成約数を超えている状況です。

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※上グラフ:実数、下グラフ:昨年対比
赤:2020年 青:2019年

新規売り出し数は完全に復調

成約数同様に、新規の売り出し物件数も、4-5月においては昨年比-40%ほどの急落を記録していますが、その後回復を続け、直近では昨対比イーブンへと戻ってきています。

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※上グラフ:実数、下グラフ:昨年対比
赤:2020年 青:2019年

成約価格もはや強い上昇基調?

そして重要な、成約物件の価格を見てみましょう。
なかなか興味深いですが、日本でいうコロナ緊急事態中(3-4月)においても価格の下落は見られなかったようです。これも日本も同様にて、3-4月の成約状況はそれ以前からの検討者による購入となるため、価格の影響は受けづらい。

一方5-6月については昨年対比割れを起こすような価格下落が見られますが、なんと7月から急回復。見事なVカーブを描いて、直近では昨対+9%となる価格上昇を見せています。

もともと長期で見て人口も増えることから価格の上昇基調が強い米国ですが、ここまで価格が上がっているのは後述しますが、強烈な経済政策による効果といえるでしょう。

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※上グラフ:実数、下グラフ:昨年対比
赤:2020年 青:2019年

定量的な市場の回復も報告

他企業が出している指標も見ておきましょう。Redfin同様に、米国大手不動産会社兼ポータル運営を行うRealtor.comが発表しているリカバリーインデックスも、7月頭に100を超え、回復を示しています。

住宅需要、供給、価格、販売ペースを元に算出されたRealtor.comの独自指標

不動産会社が出す数値だけでは信頼ならない、、ということで、モーゲージ・バンカーズ・アソシエーション(MBA)が発表している個人の住宅購入のための住宅ローン申請数(一般的にこの申請数が予想より増加発表であるほどドル買い、と言われるほど重要な指標です)は1年前と比較して39%増加していると発表しています。(申請のため、実態のローン成約件数とは乖離はある)

背景にあるのは、低金利と堅調な株式市場

なぜここまで見事なV字回復を見せているのか。その背景には歴史的低金利と堅調な株式市場があります。

アメリカ政府はコロナ影響を鑑み4月にゼロ金利政策を発表。その結果3%中盤代であった住宅ローン金利も下落を続け、現在3%を切るという歴史的な低金利状態となっています。

米国住宅ローン金利実績(30年固定)と今後の予測(https://themortgagereports.com/)

日本同様、金利が下がれば住宅購入のメリットが上がるため、特に借り入れの行える中富裕層以降の購入意欲が増し、住宅購入に拍車がかかっている状態でしょう。

加えて、テレワークなどのライフスタイルの変化によって、米国でも戸建てニーズが高まるとされており、戸建て関連の上場企業株価も高騰している状態です。

また、アメリカの株式市場一時的な下落があったものの、IT関連企業が中心となるナスダック市場については6月頭に歴史上過去最高値を更新。

ナスダック平均

日経平均に性質上近しいダウ平均はコロナ前の水準には戻していませんが、堅調な上昇トレンドに戻しています。

一方、日本同様に実体経済から離れた値動きであると捉えることもでき、今後の暴落リスクも孕んでいるといえます。

予断を許さない住宅ローン延滞と失業率

と、いいニュースばかりを述べてきましたが、無視できないバッドニュースもあります。日本でも新型コロナ影響によって住宅ローンの支払いに困窮する件数が増えていると報じられていますが、米国も同様です。

同MBAによる発表では、2020年第2四半期末時点で、1~4戸建て住宅用不動産の住宅ローンの延滞率は、全ローン残高の8.22%に上るとし、これは1年前に比べて3.69%増加しています。

米国の主要な銀行は、日本同様にコロナ影響による返済難については、一定期間の返済猶予・借入期間の延長などをこうして支援を行っている状況です。延滞料がかからず、信用情報にも傷がつかない、支払者にとってはありがたい状況です。しかしながら支払額が減るわけでなく、雇用の回復が急務とされています。

米国の失業率は3-4%水準から4月14.7%と急増し、そこから7月度10.2%と減少傾向にはありますが、その減少幅は期待よりも薄い状態です。

住宅ローンの延滞?焦げ付き?と聞くとサブプライムローンの焦げ付きに端を発したリーマンショックを想像しますが、現在サブプライムローンほどの信用力の低い買主に対するローンは抑制されている状況かつ、銀行による差し押さえも限定されている状態なのです。

そもそも米国は日本に比べて解雇がしやすいため、失業率の増減が激しいですが、この14%超というのはリーマンショック時の10%を優に超える衝撃的な数値となっています。失業保険が手厚いといわれる米国ではありますが、長期的な高失業率は住宅ローンの返済をますます悪化させる状況となるでしょう。

アメリカの住宅市場まとめ

  • 成約数・新規売り出し・価格ともに完全回復
  • 背景には低金利と堅調な株式市場
  • 一方、ローン延滞率が急上昇しており、コロナ影響層と無影響層の境界線がはっきり見える状態

ファクトから考える、半年先の日本の住宅市場

長くアメリカの住宅市場について見てきましたが、そこからわかる日本の住宅市場の今後とはどのようなものでしょうか?

まず前提として直近の状況ですが、冒頭に述べた通り、

・価格・成約件数ともにコロナ前の状況に戻ってきている

が一言で言える状況です。弱めに言えば業界としては致命的な影響は出ていないといえるでしょう。

また、SUUMOなどの住宅ポータルサイトにおいては、PVや反響数が軒並み昨対でも増加傾向と、住宅検討者の増加も聞こえています。

上記は米国と同様の状況であることを意味し、住宅購入の流動性が高い米国のほうが状況を敏感に反映しやすいとすると、日本の住宅市場もアメリカ同様に回復してく見立てが強いでしょう。

アメリカと異なる点は?

しかしながら、米国市場と日本とで異なる点でいれば、住宅ローンの金利水準です。

ご存じのとおり現在の日本の住宅ローンは、フラット35で1.3%程度と極めて安いかつ、直近2か月では上昇が発表されています。(ちなみに変動金利は下がっていますが)

そもそも日本の住宅市場は低金利に触発されて価格上昇を強めていた側面が強いため、少々の金利低下が今以上の購入のインセンティブになりにくいと同時に、長期金利の上昇も相まって米国ほどの刺激策にはなりえないということがわかります。

そうするとどうなるか、コロナショックによる実体経済へのダメージがあることは事実のため、所得の減少、特に冬ボーナスの心細さによって住宅購入意欲の減少を引き起こす可能性は高く、そうすると販売の長期化、結果として売却価格の低下につながりダウントレンドの形成が発生する可能性は高いと考えられます。

しかし、超高額帯を除く日本の住宅価格の下方硬直性は高いため、下がったとしても5%程度コロナ影響によってものすごく価格が安くなることを期待して家探しをされている方もいますが、そこまでは市場は甘くない

家探しを本気で考えている人にとっては、待っている間の賃料もばかにならないため、売り物件数が戻ってきたこのタイミングから購入を進めていくのが正しい活動と言えるでしょう。

最後に宣伝になってしまいますが、相場や買い時、などを相談しながら買いたいという方にはぜひ弊社のAgentlyをおすすめしたいです。(現在、東京23区の家探しのみ対象です)

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TERASS CEO|江口亮介

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わが家にとってベストなエリアはどう選べばいいの?

エリア選びは難しいですよね。 まずはじめに、家探しは「エリア・予算・広さ」の3点の中でバランスをとることが大事だと言われています。選択肢を広げすぎるとかえって悩んでしまい決められないことが多いため、ご自身の知っているエリアや最初に想定していたエリアで、この3つのバランスが成り立つのであれば無理にエリアを広げる必要はありません。 そのうえで、予算と広さの希望をかなえるために、「エリアを広げて探してみよう」という場合は以下のように探してみることをおすすめします。 優先したい暮らしの条件を挙げてみる(職場へのアクセス、教育環境、緑、資産性など)上記の中でざっくりとでも、優先順位を決める上記がかなえられるエリアを、交通アクセスなら路線、資産性であれば再開発のエリアや複数路線が走っているところなどから探していく エリアに詳しくなく、③が難しい場合は、希望のエリアイメージをAgentlyで伝えてみると、提案がもらえるので試してみてくださいね。

TsutomuNarisawaのプロフィール写真成澤勉

マンションを買うのにベストな時期はいつ?

一般に、家探しシーズンといわれる1〜3月は物件の流通量が多くなりますので、「買う時期」というよりも、「家探しをスタートする時期」としてぴったりなのは年明けからだと言われています。 ですが、それ以外の時期にいい物件が出ない、というわけでは決してありません。 住宅購入は大きな買い物ですから、思い立った時にまずは相談からはじめて、じっくりと情報収集していただくことをおすすめします。 中古マンションでは、市場に出た個人や企業が持っている物件を購入する形となります。家を売る理由は本当にさまざまですので、いい物件が出る時期は読めないうえに、一度市場に出たら数日でとられてしまうようなこともあります。「こんな条件が出たら買おう!」と事前に決めておくことが大事です。 また、新築マンションの場合は、売り主はマンションを建てたデベロッパーであることがほとんどです。その会社の決算期が近くなると家具や家電などのキャンペーンが増えることがありますが、最近では新築の供給自体が減っておりいい住戸は早めに売り切れてしまうこともありますので、ほしい物件であれば時期を気にせず早めに問い合わせてみることをおすすめします。

NatsuoWatanabeのプロフィール写真渡邊夏男

マンション購入の頭金の決め方は?目安はあるの?

昔と違い、現在は頭金は0円でも購入できます。目安はありませんが、自営業や経営者の方は1割や2割の準備を必須とする金融機関もあります。 頭金0円の場合 メリット:手元に現金を多く残せるデメリット:金利が高くなる可能性がある、住宅ローンの借入額が多くなるため支払う利息も多くなる 頭金を入れる場合 メリット:支払う利息が少なくなる、借入額が少なくなるため審査が通りやすくなるデメリット:手元に残る現金が減る 今は空前の低金利の時代ですから、無理に頭金を多く入れる必要はありません。頭金を入れることに拘り、その後緊急時に手元に現金がなく別の借り入れをしてしまうのでは本末転倒です。 また、頭金は最低限にして、残った現金を運用したほうが、頭金を入れて利息を浮かせるよりも得になる場合もあるので、ファイナンシャルプランナーなどにライフプランから資金計画を相談するとよいでしょう。

Ryomizuchiのプロフィール写真水智崚

最近追加されたみんなの相談

子どもがいるのですが、マンションは音が響いてしまうでしょうか?

マンションの構造や部屋の位置によりますが、1階部分であれば足音は響きにくく、あまり気にせずに子どもを遊ばせられるでしょう。 とはいえ、音は壁伝いにも響くことがあります。子どもの遊び場となる共用施設があるマンションならば、それらの施設を利用することで日中気兼ねなく走り回ることも可能です。 また、ラグをひいたり、タイルカーペットなどで足音を軽減する方法もあります。 リノベーションなどで天井コンクリートあらわしにすると、見栄えはとてもよいのですが、階を隔てる空間がなくなる分、上下階の音が聞こえやすくなることがあります。 マンションの管理規約によって、楽器演奏の時間帯などが指定されている場合や、音が反響しやすいエントランスホールや中庭での追いかけっこなどが禁止されているマンションもありますので、気になる方は事前にエージェントから管理会社へヒアリングをしてもらうことが確実です。

SatoshiTakayamaのプロフィール写真高山吏司

見学から購入まで、おおまかなスケジュールを教えてください。

中古マンション・中古戸建ての場合、探し始めから引き渡しまでのスケジュールは、意外とスピーディーです。 ■家探しの前準備・予算や資金計画を決める・物件の条件を決める・SUUMOなどで気になる物件をリストアップし、相場観をつかむ ■物件の内覧・候補物件の内覧(2〜3物件程度見ることが多い) ■申し込み〜契約(1週間〜1ヶ月程度)・売主へ買付申込書を提出(内覧に行った即日に送るケースも)・売主と合意がとれたら契約日の設定へ・住宅ローンの仮審査を済ませる(数日〜2週間)・売買契約を締結する・売主との間で決済日(引き渡しの日)を決める・住宅ローンの本審査を通し、住宅ローン契約を進める(1週間〜3週間)・決済日に、金融機関にて物件代金の支払いと、引き渡しをおこなう 特に慌ただしくなるのが、買付の申込みをしてから決済までの期間です。住宅ローンの本審査のために金融機関に行ったり、源泉徴収票や確定申告書などの審査書類を集めたり、対面で決済をしたりなど、手続きも増えていきます。税務署など、平日に時間をつくって取りに行かなければならないケースもあるため、あらかじめ用意しておくものをエージェントに確認しておくとスムーズでしょう。 また、余談ですが内覧については必ず意思決定をおこなう方全員(ご夫婦ならばお二人揃って)で行く、もしくは一緒に見に行こう、と思えるような物件をまず見つけることをおすすめします。物件をご夫婦のどちらかが気に入り単独で内覧に行った場合、実際に買付の申込みを出す段階で「やっぱりここが気になる」「ここもチェックしたい」と、内覧に行っていない方が躊躇してしまうことが多いです。そうして時間をかけてゆっくり決めた結果、満足できる物件が購入できる場合はよいですが、近年は特によい物件ほど速く売れてしまうため、買い逃して後悔される方もいらっしゃいます。 物件を一緒に見て回れば、その過程で自然とご家族の意見がまとまっていきますので、ぜひ内覧は意思決定をされる方みんなで行ってくださいね。

SatoshiTakayamaのプロフィール写真高山吏司

車のローンがあるのですが、住宅ローンは組めますか?

車などのローンがある状態でも、住宅ローンは組めます。 ただし、限られた与信枠の中の一部を車のローンに使っている状態で新たに住宅ローンを借りるため、車のローンがない場合と比べて借入れの上限額は減るケースが多いです。 場合によっては、融資までに完済を求められたり、返済期間に遅延がない事が条件となる場合もあります。事前準備として、返済の詳細な情報が確認できる「返済予定表(償還予定表)」を用意しておきましょう。

KaikiKogureのプロフィール写真小暮海貴

50代でマンションを購入するうえでの注意点を教えてください。

おもな注意点としては、住宅ローンの完済時期があげられます。 住宅ローンの借入条件として80歳までに完済することを前提としている金融機関がほとんどのため、ご年齢によっては返済期間を30年以内にしなければなりません。   完済期間を短くすると、その分月々の支払い額が上がります。期間が短ければ最終的に支払う利息額も減りますが、老後資金を考慮していくらを毎月の支払額に設定するのか、ライフプランから考えていただくとよいでしょう。 また、健康上の理由で住宅ローンの審査がおりにくくなることもあります。団体信用生命保険などに条件がつくだけの場合もありますが、金融機関や提携の保険会社によってその基準は異なりますので、ご不安な方は複数の金融機関に審査を通していただくことをおすすめします。

YukioYamaguchiのプロフィール写真山口幸夫

20代でマンションを購入するうえでの注意点をおしえてください。

20代で購入される方は、特に今後ライフスタイルや勤務地が変わる可能性が他の年代に比べ て高いため、いざとなったらすぐに「売れる・貸せる」流動性が高いマンションを選んでおいたほうがよいでしょう。 また、たとえ年収が高くても今の会社への勤務歴 が浅いと住宅ローンの審査上不利になることがあります。在籍3年程度経っていれば問題ありません。とはいえ、一昔前と違い現在は転職が当たり前の世の中となっているため、金融機関によっては1年や半年の在籍でも審査可能です。 なお、独身の方の場合は既婚の方より審査が厳しいことと、20代で先に投資用マンションをローンで購入される方もいますが、その後自己居住用での住宅ローンが簡単には組めなくなるので、注意が必要です。

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