2020年4月7日に戦後初めて発令された新型コロナウィルスによる緊急事態宣言。5月25日に解除となり街には人が戻り、小売産業は6月業績が昨年比プラスで着地しているなど、一定の経済回復を見せてきています。
しかしながら、7月9日には東京都感染者数224名と、検査数の差はあれど、数字上での感染者数の再拡大が見られ、再び緊急事態宣言か?などという声もある状況です。
今回は、不動産市況というよりは、むしろ不動産業界の内側、このコロナ禍においての状況の俯瞰と、そして今後の業界がどう変わるのかについてお話しさせていただきます。
※不動産といっても商業・ホテル・賃貸と多岐に渡りますが、今回は居住用不動産にまつわる話です
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withコロナの不動産業界の現状は?
4月-6月末までの状況を1言でいうと、「実需は底堅く、戸建てブーム来るかも?」という状況です。
不動産に関連するプレイヤーを以下に端的にまとめます。(実需を中心に、一部投資不動産含む)
デベロッパー
- 土地の仕入れ難は変わらずで、数字を作るために購入意欲は引き続きは高い
- 経済状況不安定な状況から、期間を延ばしながらゆっくり販売していく見立て
- 総合ディベロッパーについては、ホテル・商業(アウトレットなど)の業績の見たてが厳しく、需要の底堅い住居不動産に対する期待は高い
- モデルルームのオンライン見学・VR活用などが一気に進んだ
仲介(エージェント業)
- 大手財閥系は4-5月の自粛期間の影響が大きく、売り上げ維持のために営業日を増やすなどしながら対応
- 6月に入ってから、4-5月の客溜まり、および安く購入できるのでは&広いところに引っ越したいというニーズがあり、6月の反響(問い合わせ)は昨対大幅増。大忙しの状況
- 特に、戸建ての反響率が昨対2倍弱の大幅増状況で、特に新築戸建を扱う仲介会社は5月実績においても昨対プラスの好調ぶり
リノベ再販会社
- どうしても相場高な物件が多く、かつ短期回転が求められる中、高買いした物件の売れ行き低調気味で、早めの値引き調整をしながら販売を進めている
- 再販事業のみならず、事業撤退・ワンストップ仲介業への進出など、事業ポートフォリオ多角化を行う企業も
投資不動産仲介系
- 投資は実需に対して「今」買う理由が弱いため、投資家の購入意欲は一部を除き落ち込み気味
- レオパレス問題影響でローン審査が厳しくなっており、銀行との関係値が問われる状況
銀行(ローン)
- コロナ影響、ARUHI・かぼちゃ問題も影響し、特に単身世帯への審査が厳しい
- 自宅勤務の影響もあり審査時間が長くなっている
- 一方、一般的な融資状況は変わらず問題なく借り入れはできる状況
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と、実需需要は底堅く、リモート対応や・ローン付け力が短期的には問われる状況になってきていると感じています。
コロナ渦で不動産【仲介】業界が抱える一番の課題
不動産業界は幅広いですが、不動産仲介業における一番の課題は、関係者が多いことによるオンライン化の進行の遅さ、です。
前述のようにこのコロナショックによってオンライン化は予想以上に進みました。
大手ディベロッパーである住友不動産は、6月1日から全マンションで内見から決済、引き渡しまで完全オンラインで実行できるようになったことを発表しました。
「やるじゃん住友さん!」と思うと同時に、首都圏では取引の中心になる中古仲介においては、まだまだこうなるには時間が掛かりそうです。これがコロナ禍において課題になりうると思っています。
何故かというと、新築マンションの多くは売主と販売者が同じになるため、売手↔買手というシンプルな取引になり、このようなITツールの導入がスムーズに進みます。
一方中古住宅が主になる仲介取引の場合は、売主(主に個人)が販売を仲介会社(エージェント)に依頼し、同様に買主も購入サポートを仲介会社に依頼するため、「分かれ」の場合は売主→仲介会社↔仲介会社←買主という構成になり、新築マンションに比べ倍の登場人物となります。その結果、購入側が例えば契約や決済をオンラインで希望したとしても、売り側が対応していないという場合は、一般慣習として今まで通りのオフライン決済が行われるほかない状況となります。
特に都内の中古マンション市場は大手財閥系のシェアが他エリアに比べて高いため、一足飛びにはオンライン化が進まないでしょう。
しかしながら、東急リバブル社が2月にオンライン決済サービスを導入したりと、オンライン化に対する兆候は少なからずある状態です。
コロナ渦中でも伸びるエージェント・不動産会社の特徴とは?
ここからは仲介会社の目線に立ち、このコロナ禍のおいてむしろ競合差別化ができ、伸びゆくエージェント・不動産会社について語れればと思います。
業態業種によって状況様々ですが、一般的な先物メインの仲介会社・エージェントにフォーカスをあてると、これからの「売れる営業」像の変化が見えてきました。
オンラインでも積極的に商談を進められる
言わずもがなですが、オンライン(リモート)接客が数ヶ月にして圧倒的な市民権を得た今、できて当たり前、、かと思いきやまだまだそんなことはありません。
先程お伝えしたとおり、新築マンション業界に比べてオンライン化の進捗が遅れている仲介業においては、まだまだオンラインミーティングができない企業・自分も存在しています。そんな中、顧客の要望に柔軟に対応し、zoomやGoogle meetでスムーズにオンライン商談を行えるエージェントは今後優位性を高めていくでしょう。
また、オンラインだと「相談」に留まってしまい話が進まない、というケースもあります。画面越しでも心理的距離を感じさせず、内覧日の決定など具体的なアクションまで積極的に話を進められるエージェントが、今非常に強いです。
”自分ごと化”させるメールコミュニケーションができる
コロナ前から当然重要であったメールコミュニケーションですが、リモートワークの増加や現地案内の減少によって、ますます重要性を増してきます。
しかしながら、顧客のメールボックスには効率を重視してコピペされたような定型文あふれています。少ない工数で相手の要望を理解して「1to1の読む価値のあるメール」ができるエージェントが、意欲の高い顧客からの返信を多く獲得しています。
当社が運営する、家さがしカスタマーとエージェントのダイレクトマッチングサービス「Agently」においても、メール文面で相手の要望を理解していることがアピールできる人とそうでない人で、返信率やマッチング率が非常に差が出ることが明確になっています。
STAY HOME期間で反響が大幅に増えてはいるものの、それを契約につなげられるかどうかは、従来の営業トークだけではなくメールコミニケーションを効率的に行いながらオンラインで信頼を勝ち取り、内見内覧につなげていくスキルにかかっています。
戸建ての経験・知識が豊富
リモートワークが可能になったことで、戸建てを検討する人が以前よりも高まっています。郊外化が本当におこるのか?という議論についてはまだ実績が出きっていない部分がありますが、大手ポータルサイトにおける戸建て反響は顕著に伸びており、ニーズが高まっていると考えられます。
マンションに比べ戸建ては物件の個別性が高いため、戸建て(特に中古)の良し悪しについて見極めることができるエージェントはアドバイスを求められる機会が増えていくでしょう。
簡易リフォームの知識がある
戸建てのニーズの高まりと同様に、家にいる時間が増えることから、より自身の生活スタイルにあった間取り・設備を求める傾向が生まれています。
となると、例えば少し間取りを変えて仕事スペースを作る、または将来的な子供部屋のための部屋が作れそうか否か、それにかかる予算はいくらくらいか、といった見立てを現地でたてられるエージェントは、顧客から重宝されますし、その人と内覧にいく決定的な理由にもなります。
中古住宅の時代と個人の時代に活躍するエージェントたち
ここまで不動産業界の内側に近い部分を伝えてきましたが、首都圏においては毎年伸びている中古住宅市場において、不動産エージェントたちには一層高いスキルが求められるようになっていると感じます。
前述したとおり、取引の複雑さからなかなか簡単にはすべてオンラインになる、ということには時間が掛かりそうですが、やはり個人個人のITリテラシー・意識がコロナ禍だからこそ試されている状況です。
2013年以降のアベノミクスによって市場が年々拡大・値上がりしていき取引が活発だった時代はもう終わり、「誰でも売れる」から、「この人が担当だったから買えた」という取引が増えていくと考えています。
国や業種に限らず、このコロナショックに如何に対応できるかを問われている昨今ですが、不動産業界においては、特にスキルによって勝ち負けがはっきりとしていく時代になっていきそうです。