マンションを売却したときには、譲渡所得が課税の対象になります。譲渡所得とはどのようなものか、詳しく見ていきましょう。
マンションを売却したときの売却益が「譲渡所得」
マンションなどの不動産を売却すると、売却代金が手に入ります。この売却代金からマンションを買ったときと売ったときの費用を差し引いた利益が「譲渡所得」です。
譲渡所得には所得税と住民税がかかりますが、給与所得などその他の所得とは切り離して税額が計算されます。この課税方法が「分離課税」と呼ばれるものです。
譲渡所得を計算式で表すと、以下のようになります。
譲渡所得=収入金額−取得費−譲渡費用
収入金額とはマンションを売ったときの金額、つまり売却代金のことです。これに対し、マンションを買ったときの金額は取得費になりますが、取得費には買った時の費用も含まれます。
取得費となる費用は、具体的には以下のようなものです。
【取得費】
・土地・建物の購入代金や建築代金
・購入時の税金(印紙税、登録免許税、不動産取得税など)
・仲介手数料
・測量費、整地費、建物解体費など
・設備費、リフォーム費
・住宅ローンの借り入れから入居までにかかった利息
また、譲渡費用は売った時の費用です。具体的には以下のような費用が挙げられます。
【譲渡費用】
・仲介手数料
・印紙税
・借家人に支払った立退料
・建物解体費など
・売買契約締結後に支払った違約金
・借地権の名義書換料など
なお、建物は期間の経過とともに劣化などで価値が減少していくとみなされます。そのため、用途や構造、経過年数に応じた減価償却費を取得費から差し引くことになります。居住用マンション(鉄筋コンクリート造)の減価償却費は、以下の計算式で求められます。
減価償却費=(建物購入代金+建物購入費用)×90%×償却率(0.015)×経過年数
所有期間が5年を超えると「長期譲渡所得」になる
マンションを売却したときの税額は、譲渡所得に税率をかけて計算します。マンションの所有期間5年以下が「短期譲渡所得」、5年超が「長期譲渡所得」とされ、それぞれ税率が以下のように異なります。
【短期譲渡所得】(所有期間5年以下)
譲渡所得×39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)
※復興特別所得税は税率2.1%を所得税に乗じた額(以下同)
【長期譲渡所得】
譲渡所得×20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
なお、マンションの所有期間は売却した年の1月1日時点でカウントされます。例えばある年の4月に買ったマンションを、5年後の5月に売ったとすると、売った年の1月1日時点ではまだ所有期間が5年以下なので短期譲渡所得となるのです。
長期譲渡所得とみなされるには、買ってから5年目となる年の翌年以降に売却する必要があるので注意してください。
約800万円の譲渡所得で税額300万円以上のケースも
5000万円で購入したマンションを6000万円で売却したケースについて、所有期間による税額の違いを試算してみましょう。
【設定条件】
収入金額(売却価格):6000万円
購入時価格:5000万円(土地1500万円、建物3500万円)
購入時費用:150万円(土地分45万円、建物分105万円)
売却時費用:210万円
まず所有期間3年で売却した場合の所得税(復興特別所得税含む)と住民税の合計は以下のようになります。
【所有期間3年の短期譲渡所得のケース】
譲渡所得
収入金額(売却価格6000万円)-取得費(購入価格5000万円+購入費用150万円-減価償却費146万25円※1)-譲渡費用(売却費用210万円)
=786万25円
税額
786万25円×39.63%
=311万4900円(100円未満切り捨て)
※1 減価償却費=(建物価格3500万円+建物分購入費用105万円)×90%×償却率0.015×経過年数3
次に同じ設定条件で所有期間が7年の場合の税額を計算すると、以下のとおりです。所有期間が長くなると減価償却費が大きくなり、譲渡所得は増えますが、税率が低くなるので税額は少なくなっています。
【所有期間7年の長期譲渡所得のケース】
譲渡所得
収入金額(売却価格6000万円)-取得費(購入価格5000万円+購入費用150万円-減価償却費340万6725円※2)-譲渡費用(売却費用210万円)
=980万6725円
税額
980万6725円×20.315%
=199万2200円(100円未満切り捨て)
※2 減価償却費=(建物価格3500万円+建物分購入費用105万円)×90%×償却率0.015×経過年数7
マンションを売却した翌年に確定申告が必要
マンションを売却したら、所得税の確定申告が必要です。申告は売却した年の翌年の2月16日から3月15日までの間に、管轄の税務署で手続きをします。申告に必要な書類は税務署で手に入るほか、国税庁のHPからダウンロードしたり、電子申告する方法もあります。
納税は申告と同時期に税務署か金融機関で行います。申告の際に振替納税の手続きをすれば、指定した口座から4月20日前後に引き落とされます。全額を納めるのが難しい場合は、延納という手続きも可能です。これは納付期限までに税金の半額を納め、残りの半額を5月31日までに納税する方法ですが、延納期間中は年1.6%の利子税が加算されます。
住民税については所得税の確定申告をすれば、改めて手続きする必要はありません。給与所得者であれば勤務先が給与から天引きして納付します。自営業者などは所得税の申告後に市町村から納付書が送られてくるので、そこに記載された税額を納めればよいのです。
執筆/大森広司(オイコス)