住宅購入において夢のマイホーム新築戸建てから、マンションへのシフト、そして今は新築マンションから中古マンションの購入が首都圏においては最も多い選択肢となっている。
以前、Newspicksの動画放送に出演した際に、中古住宅選びのポイントとして「議事録を見ろ!」を発言し、をキングオブコメントとして選んで頂いた。
それ以降、多くの反響を頂いており、改めてその概要や具体的なチェックポイントを示させて頂きたい。
そもそもマンション管理とはなにか?
中古マンション購入の一般化によって着目度が高まっているのが「マンション管理」の存在である。
戸建てが「自分の城(シロ)」ならば、マンションは縦に伸びた「みんなの街(マチ)」だ。その街がどのような運営状態・財政なのかを確認することは当然であるながも、その重要性を理解している人は少ない。
原因として資料の難解さ・情報の公開性の低さが挙げられるが、国としても対応を進めている。
実は少々分かりづらいのだが、「マンション管理」とだけいうと、私の中の分類では3つの意味がある。
1つは、自分が保有する区分を管理すること。「賃貸管理」とも言われる。入居者からの賃料の徴収代行や、クレーム対応・入退去対応など。
2つ目がマンション全体の清掃や、受付対応、駐輪場や駐車場と言った共用部の保全を行う、いわゆる「管理人さん」が行う”今”の状況に対応する管理業務。
そして3つ目が、修繕計画を立てたり、実際の修繕を実行したり。そして管理規約などをその時代にあった形に柔軟に変更していく、などの管理組合が行う将来の保全のために行う管理業務である。
一般的には、マンションの所有者によって組織される「管理組合」が発注者となり、マンション管理会社に業務が発注され、②の日常業務ならびに③の計画の作成・修繕業者の選定などを行う。③に関しては、あくまで策定は管理会社が行うが、それに対して決を出すのはあくまで所有者であるという点だ。
※一般的には、とは、管理組合の組成については、「区分所有法」や「マンション管理の適正化の推進に関する法律」によって規定されており、基本方針として、適正な管理を行うことや所有者の管理組合運営への当然参加が明記されている。しかし一方、築古の物件で法制定前に分譲された物件については管理組合がないというマンションも存在する。
ちなみに、所有者=入居者というわけでは必ずしもなく、賃貸入居者がマンション管理に携わることはない。(厳密には、総会などで意見を述べることはできるが、議決権はない)
特に、この③の管理が極めて重要であり、今マンションに行っている問題解決や、将来に対する備えが、10年後20年後のマンションの価値を握っているといっても過言ではない。
管理・修繕状況がおろそかだったために、十分な修繕費がなく外壁が剥がれ落ちたり、電球の交換が行えなくなる、当初美しかった玄関の植栽がなくなってしまったり、、とその影響範囲は広い。
その将来の価値を保全するための管理状況を確認する1つの手段として、管理組合の議事録を見る、が存在する。
「管理組合の議事録」とは?
マンションの所有者が組織する「管理組合」は通常管理規約で最低でも年1回以上、定期的に総会を行い、管理状況や議題について議論・確認を行うよう法律で規定されている。また、管理組合の理事のみが参加する「理事会」も存在し、総会で決議しなくてもいいような軽微な内容や、総会で決議前の議案について作成が行われている。
そしてこの総会や、理事会などの履歴が示されているものが議事録であり、作成は前述した区分所有法によって規定されている(作成しない・虚偽記載の場合には罰金が課される)
そこには、どのような問題が発生し、それに対してどのような対処がなされたのか。例えば修繕費の値上げを行った場合は、その背景としてどのような議論がされているかが確認できるのが議事録である。
この議事録は、同様の区分所有法によって「紙もしくは電子媒体によって適切に保存し、利害関係者の閲覧の要望に対しては開示する」ことが規定されている。
購入検討者も利害関係者にあたるため、要望すれば閲覧が可能である。この場合自身で問い合わせるのではなく、販売・仲介を行ってくれている担当者に連絡することで手配が可能である。その場合は、少なくとも3期分の議事録を閲覧するのが良いだろう。
では実際議事録の何を確認すればいいのか、、以下5つのチェックポイントを上げたので、確認いただきたい。
管理議事録のチェックポイント
①:そもそも適切に保管され・閲覧可能か
築古物件の場合、管理組合がない、もしくは管理組合議事録がないマンションというのも実際には存在する。議事録がない=管理状況が悪いとは必ずしも悪いということにはならないのだが、住宅ローンの借り入れにおいて不利になるケースもある。特に築古物件においては、まずは議事録が見れるという点においても、管理状況の評価につながる。
②:管理費・修繕積立金の滞納状況・対応状況
毎年毎月税金を払うが如く、マンション所有者は管理費・修繕積立金を毎月払う義務が発生する。その際、その月費用を滞納する所有者が出てくる可能性がある。その場合の対処についても議事録には記載される。
まず滞納者の数と、滞納額はどれほどか。大規模なマンションになると1-2件は滞納が発生することは普通で、そこまで神経質になる必要はない。しかしあまりにその比率が高い(世帯数の3%以上)場合は、住人のマナーや管理会社・組合がそれを解決できていないことになる。
通常、滞納者にはまず電話・書面による催促を行い、それでも反応がなければ、理事による訪問による催促、それでも効果がなければ訴訟、最終的には財産の差し押さえによる回収となる。
このような対応状況が正しく明記され、問題が解決できているかも議事録で確認可能である。
③:修繕積立金の値上げなどの履歴
良好なマンション状態を維持するために、長期的なマンションの修繕計画は立てられ、それに対して収入が計画通り溜まっているかが重要である。しかしながら計画は立てて終わりではなく、その後建物の状態や状況の変化に対して適切に金額の調整ができているかが同時に着目ポイントである。
例えば、当初マンションの駐車場の収入を見込んでいたが、車の所有率の減少によって空きが目立つマンションの駐車場は多い。そうなると期待された収入が得られないことになるため、どのようにそれを補填するか考慮する必要がある。この場合、外部への貸し出し開放や、駐車場費の値上げ、最悪管理費の値上げ、、はしたくないので、清掃業者の変更によるコスト削減を検討する。
基本的には委託先の管理会社が適切に提案を行うべきであるが、それがなされていないでなぁなぁになっているケースには注意が必要である。
ちなみに、修繕積立金は将来に向けて値上げをする計画を建てることが通常であり、上がっている=悪いことではないことに注意いただきたい。
④:管理規約改正の頻度
数十年と存在し続けるマンションだが、その間に社会環境も変化する。その変化に対する対応もよいマンション管理としては重要なポイントである。
近年でいえば、民泊の是非や、最近ではコロナ対応など。状況にあわせてすばやく管理規約や運営方法を変えられる管理組合は強い。
特に先述した管理状況の認定制度に認可されるために迅速に対応ができる力を持った組合かどうかも、議事録から読み取れる可能性もある。
⑤:コミュニティ活動の履歴
最後、これは大規模マンションに限った話ではあるが、マンションでの防災訓練やお祭りなどのイベントを検討する管理組合も直近増えてきている。嫌煙する方も多いが、横のつながりがあることは防犯・防災意識に直結するため、活発であることはプラスである。
自身が参加しないにしても、管理組合の管理意識が強いことを意味し、資産性の維持が期待できる要素である。
まとめ
ここまで延べてきたが、「議事録を読む」というのはマンションの管理状況を見極める1つの手段であり、そしてまたマンションの管理状況とはマンションの詳細の資産性を定める1つの指標である。
議事録を必ず読まないといけない。議事録がないマンションはだめなマンションだ、と決めつけるのは早計であるが、議事録を読むことで、自分がこのマンションに入居したときに、どのような管理が行われるのかを想像することができるのが議事録である。
議事録閲覧にはそれなりの手間、特に仲介エージェントにとって工数がかかる部分もあるので、何でもかんでも確認するというよりは、気に入ったマンションと出会った際の、最終確認、もしくは最後の背中の後押しとしてぜひご活用いただくことをおすすめしたい。