森ビルは9日、東京都心の街並みを再現した縦15m、横24mの大型模型を報道向けに特別公開した。
この模型は都市全体を俯瞰し都市と東京の未来を考えるための研究施設、「森ビルアーバンラボ」の一部。1/1000の東京の巨大な模型と、模型をぐるっと囲む360度のパノラマスクリーンをキャンバスに、3Dプロジェクションマッピングなど最新鋭の映像と音響を組み合わせて表現する東京の現在、過去、未来を鳥の目で俯瞰することができる。
発表された大型模型は今年の3月時点のもの。東京オリンピック会場の新国立競技場も完成済みだが、なんとこの模型自体は1998年から作り始めており、20年にわたり半年に1回更新されているそうだ。これまでは地権者や入居企業、行政との会議に模型を使ってきたが、これからは次の世代を担う子供達の「都市を考える場」としての活用も考えているという。しかし残念なことに、現時点で一般公開の予定はない。
そんな一般非公開の都市模型を写真を交えて詳しく見ていく。
東京のカルチャーを表現したプロジェクションマッピング
森ビルアーバンラボでは2つのプロジェクションマッピングが行われた。
まずはスタイリッシュに東京を表現したウェルカムプログラム。4分間のウェルカムプログラム「TOKYO CITY SYMPHONY」は都市の鼓動から始まった。チームラボを彷彿とさせるビビッドな光の演出も交え、一つの生き物のように息づいた東京が表現されている。最後は打ち上げ花火や様々な色の光で東京の未来がエネルギッシュに祝福され、締めくくられる。
交通網や用途地域を直感的に表現
次に「TOKYO URBAN STUDIES」という、東京の特色や課題を直感的に理解できるプロジェクションマッピングが始まる。交通網、地形、海岸線の変化、用途地域、オリンピック施設、緑といった様々な視点から東京の未来を考えることができる。
「東京湾の海岸線の変化」では、12万年前の旧石器時代から東京を振り返り、江戸時代徳川家康の日比谷埋め立て、明治から昭和にかけてのゴミ処理埋め立てもフィーチャーされた。
また、住居、商業、工業など市街地の大枠としての土地利用を定める「用途地域」のプロジェクションマッピングでは、東京都心には住宅、商業施設、オフィスが混在していることが一目でわかる。オンとオフとの明確な差がなくなっており、集約した地域に人が集まってきている時代の流れが表されている。用途地域一つを取っても、都市における人々のライフスタイルの変化を実感できる。
道路網が光で色付けられ、どこに道路が集約しているかが一目瞭然。それぞれの道路が整備された順番に浮かび上がる。江戸時代の五街道整備や1964年の東京オリンピックに備えたインフラ整備といった歴史も学ぶことができる。
また、森記念財団の都市戦略研究所が発表する「世界の都市総合力ランキング」をはじめ、国際都市としての東京の姿にも言及。東京が抱える課題の1つに国際交通ネットワークの強化をあげ、環状2号線の整備やBRTの普及を解決策として紹介した。
東京都心の巨大模型の横には、同社が開発を手がけている上海、ニューヨークの模型も置かれている。ニューヨークは100年以上前から高層ビルが建設され、碁盤の目のように区画が綺麗に整備されている。曲がりくねった道の多い東京と比べると、都市計画の進み方の違いがよくわかる。
また上海は建物の高さが東京やニューヨークに比べて非常に高い。ビルの高さからも、近年の経済の成長スピードを感じることができる。
別室には森ビルが開発を進めている「虎ノ門・麻布台プロジェクト」の模型もあった。
こちらも見応えのある模型であり、細部から森ビルが考える都市開発のこだわりが伝わってきた。細かく模型を見ていると、低層棟のすぐ近くに鳥居を発見。虎ノ門プロジェクトとの関係性を訪ねたところ、低層棟と区画外の神社をつなぐ橋がかけられていることを教えてもらった。「実際に住んでいる人と一緒にみんなで街を作っていこうとする、30年以上前から約300の権利者と協議を重ねてきた当社の姿勢の表れ」とのこと。残すだけでなく点と点をつなげる発想が生まれるわけを知ることができた。
また、広場でスポーツを楽しむ人たちの姿も表現されていた。2022年にオープンするインターナショナルスクールの校庭らしい。高層ビルの隣に学校があることによって、街に色々な表情が生まれる。オフィスワーカーと共に子供が登校する様子も見られるのではないだろうか。
さらに、一目でわかったのは緑の多さだ。総面積のうち、緑地は約30%を占めるという。イギリスの建築家トーマス・ヘザウィック氏が手がけた低層練には、建物のあらゆるところに木が植えられている。時間と共に木々も成長していき、数年後にはまるで森の中に住んでいるような気分を味わえるそうだ。「変化を楽しむ」というこれからの都市の1つの像が示されている。