住宅購入で大きな軸となるのが、エリア選び。馴染みのエリアで探すと大きく予算オーバー、でも知らないエリアでの暮らしは想像できないので、いい物件が見つからない…という悩みは多い。そこでオススメしたいのが城東エリア。ここ数年で飲食店やショップが増え、明るいイメージが定着してきたエリアだ。今回は城東エリア担当15年のシックストゥリーズ合同会社 Keller Williams Tokyo(ケラー・ウィリアムズ・トウキョウ)の小澤さんに、「住環境の観点から見る城東」を伺った。
※城東:台東区、墨田区、江東区、葛飾区、江戸川区
都内の他のエリアに比べて低価格。ただし近年では値上がり傾向
ー城東エリアとひとくちに言っても広いですよね。
そうですね、城東エリアとは、台東区、墨田区、江東区、葛飾区、江戸川区としてお話します。相場はもちろん築年数にもよりますし、一概にお伝えするのは難しいところです。
城東エリア全体では、都内の他のエリアと比べると、価格が抑えられている傾向にあります
ー特に今人気の街ってどの辺りでしょう。
清澄白河が大人気です。ここ数年、遊びに行く街としての人気も高い街ですよね。65平米程度の築10年前後の物件だと相場は6000万円前後でしょうか。ここ5年くらいで一気に1000万円程度上がりました。
清澄白河を希望される方は、おしゃれな雰囲気と都心へのアクセスの優先順位が高い方が多いです。同じ理由で、森下も人気があります。相場は4000万円台後半から5000万円後半。ちなみに最近リノベーション済みで5980万円の物件がありましたが、問い合わせが殺到しました。清澄白河や森下のあたりは、昔ながらの雰囲気のある小さいお店や有名なコーヒーショップなど、散歩するのに楽しいエリアだと思います。森下は清澄白河に比べて下町の雰囲気が強い印象です。
ーなるほど。その他に交通の利便性が良いのはどの辺りですか?
特に今人気が上がっているのは住吉です。有楽町線の延伸計画をご存知ですか?
ー初耳です。どこが開通するのでしょうか。
現在、有楽町線の東端は新木場駅ですが、それを途中の豊洲駅で分岐させ、東西線の東陽町駅と半蔵門線の住吉駅までつなぐという計画です。ここ数年の再開発により豊洲が発展し、人口が増加したことが背景にあります。豊洲はやはり城東エリア内でかなり高めです。相場は5000万後半から6000万中盤ですね。
今まで南北を結ぶラインがなかったので、特に江東区にとっては悲願の計画です。住吉と東陽町の間に新駅が開設される予定*もあり、近辺の不動産価格は上昇すると見込まれています。
ー都心部に近いエリアはどうでしょう。
錦糸町が人気ですね。落ち着いた住環境と都心へのアクセスがバランスよく両立されていると思います。相場は4000万円台後半から5000万中盤です。
あとは台東区の上野や浅草、蔵前でしょうか。特に上野や浅草は、インバウンドのホテル需要が圧倒的に強いエリアです。地価も安定して上がり続けており、新築マンションも増えています。
また東京スカイツリーの開業も近辺エリアの人気を後押ししています。東武スカイツリーラインの浅草駅からとうきょうスカイツリー駅を結ぶ高架下には商業施設がオープンし、隅田川沿いには連絡歩道橋が整備されるなど、発展を見せています。
ー錦糸町といえば繁華街のイメージがあります。
そうですね。確かに南側は夜の街らしい環境もありますが、駅の北側は全く違う雰囲気の住宅地です。大きな公園や新しいショッピングセンターがあり、女性単身にもファミリーにも向いていると思いますよ。
ーほかに、意外と知られていない穴場の街はありますか?
都営新宿線沿線は、価格が抑えられている傾向にあります。65平米程度の築10年前後の物件だと、3000万円台前後から購入できます。沿線一帯ベッドタウンが多いですね。
その中でも個人的なオススメは瑞江です。江戸川区はここ数年区画整理が多く行われているのですが、瑞江は特に新しいお店が増えたり、綺麗な街並みになりました。
同じく都営新宿線の篠崎も住みやすいです。瑞江と比較するとより落ち着いた住宅地です。
また、東西線の葛西や西葛西もここ5年で1000万円近く上がって、現在は4000万円台になりました。この2駅には大きなショッピングセンターがあり、日常的に使うものは基本的に近所で揃うので、生活に便利なエリアです。
ー低価格傾向にある城東エリア。戸建てという選択肢はどうでしょうか。
コロナ渦で出社頻度が下がったことで、都心から離れて戸建てを検討される方が増えています。特に価格が抑えやすい江戸川区で多いです。管理費や修繕積立金を考えると、戸建ても合理的な選択だと思います。
ただ個人的に、江東区で購入するならマンションの方がおすすめです。マンションやビル等の高い建物が多いエリアで戸建てとなると敷地も狭く、日当たりの確保も難しいです。江東区で無理して狭小の戸建てを検討するのであれば眺望の良いマンションの方が、良いかもしれません。
ーコロナ渦では、独自の給付金や保育園の対応など、自治体の対応の違いが話題になりました。
そうですね。特にお子さんがいらっしゃる家庭の生活に直結するのは、教育環境だと思います。その観点で注目されたのは江戸川区です。
まず、待機児童への取り組みとして、この2、3年で認可保育園の数が激増しました。保育士さんの住まいへの手当も充実しています。残念ながらまだ待機児童がゼロになった訳ではないですが、減ったことは事実です。
共働きの家庭が大多数の中、保活問題は重要なトピックですよね。ぜひ保育園事情という観点からもエリアを探していただければと思います。
また、江戸川区は小学生の医療費も無料です。最近江東区でもこの制度が始まりました。
水害リスクとの付き合い方
ー城東エリア、水害リスクが気になる方も多いと思います。
はい。事実、城東エリアには海抜0m地帯が多数存在します。江戸川区、江東区が特に多いです。もちろん、不動産会社は購入時に説明するので、このエリアで購入されている方は氾濫や洪水が起きた時のリスクを承知で購入されています。
ーマップが赤いエリアは怖い一方、気にしはじめたらキリがないという気持ちもあります。
近年の自然災害で名前を耳にすることが多くなりましたよね。今年度から購入時にハザードマップを見せて説明することが不動産会社に義務づけられ、住宅購入を考える方にとっては意識する機会が増えるでしょう。
水害に関して言えば、ハザードマップは水害発生時に浸水する可能性が高いエリアを示しています。つまり発生頻度とは別の話です。
水害がこの先いつ起こるかは、断言できないですよね。もちろんそれに備えて、例えば江戸川区は防波堤を作るなど対策をしています。
リスクの低さを求めるならば世田谷区や文京区といった標高の高いエリアがありますが、その分価格が高くなってしまいます。例えば千代田区の皇居の周りや日比谷のあたり、港区の麻布近辺でも、赤い地点は存在します。このように、どのエリアでもノーリスクという場所はありません。リスクをどの程度許容し、どのように備えるかは個人の価値観によるものだと思います。
ーそうなると、住宅購入時の保険の選び方も大事ですね。
はい。ただマンションの場合、水害といっても個人の部屋が浸水被害を被ることは少ないです。廊下や窓ガラスなどは共有部に分類され、共有部の被害は管理会社に納めた修繕積立金で賄うパターンが一般的です。
そのため、個人として加入する保険だけでなく、検討している物件が保険に加入しているのかをチェックすることも大事ですね。
今まで馴染みがなかった場所にも、知るとそれぞれに魅力があります。広いエリアで探すことが、理想の住宅購入に繋がるかもしれません。
エージェント提案型家探しサイト「Agently」では、小澤さんのような各エリアのプロフェッショナルに相談できます。ご利用は無料です。
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https://joinagently.terass.com/
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計画名:地下鉄8号線(有楽町線)の延伸(豊洲~住吉)
計画主体:江東区
https://www.city.koto.lg.jp/470801/kurashi/kotsu/kokyo/53247.html